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デング熱について勉強しました

デング熱について勉強しました

8月27日に、厚生労働省が「戦後初の国内発症デング熱患者が確認された」と報告し、各種メディアでも報道がなされました。

その後、感染者報告数は増え、9月10日時点で東京都内を中心に96名が報告されています。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dengue_fever_jirei.html

 

テレビなどを見ていると「未知のウィルスが日本に!」「重症化すれば死ぬこともある恐ろしい病気!」みたいな報道もあって、不安になる方がいるかも知れませんね。

今回、私の勉強も兼ねてブログ記事にしてみました。

 

まず要点は以下の通りです。

1.デング熱は蚊からうつるウィルス感染症です。

2.蚊から人にうつりますが、人から人にうつることはありません。

3.刺されてから発症するまでの帰還(潜伏期間)は3日から7日間です。

4.高熱、頭痛、筋肉痛、吐き気、皮疹、出血斑などが主な症状です。

5.症状は激烈ですが、ほとんどの人は7日間程度で治ります。

6.腹痛、繰り返す嘔吐、胸水・腹水、粘膜出血、昏睡・不穏、肝腫大、検査データ上血小板減少や血液濃縮所見重症化の警告徴候です(WHOガイドラインより)。

7.治療は、輸液を中心とした支持療法が主体です。

8.予防が大事です:蚊に刺されない工夫をしましょう。

9.巷で噂されているほど危ない病気ではありません。

 

以下、各項目に追加です。

1.フラビウィルス属に属するデングウィルスが原因です。フラビウィルス属には、日本脳炎ウィルスやサッカーワールドカップの開催地ブラジルなどで流行している黄熱ウィルスも含まれます。

デング熱を発症するデングウィルスには4種類(DEN-1,DEN-2,DEN-3,DEN-4)あることが分かっています。一度デング熱にかかってもすべてのウィルスに免疫ができるわけではなく、他の血清型で再度感染することがあります。

今回国内発症した患者さんから分離されてるのはすべてDEN-1とのことです。

 

2.蚊の中でもヤブカが媒介します。ヤブカのうち、デング熱が蔓延している東南アジア諸国ではネッタイシマカが多いのですが、我が国には土着していないとされています。我が国に生息しているヒトスジシマカもデングを媒介します。

したがって、デング熱の予防には「蚊に刺されないようにする」「蚊が増えない環境を保つ」ことが重要です。

 

冒頭に「戦後初の・・・」と書きましたが、実は第二次世界大戦中に、九州を中心に1万人単位のデング熱流行が起こったことがあります。当時の厚生省の指導で、蚊の発生予防対策と殺虫剤(蚊取り線香)の使用の徹底等で流行の抑え込みに成功しています。


デング熱の拡大を防ぐ ~蚊に刺されない生活習慣を

http://apital.asahi.com/article/takayama/2014090500001.html

 

3.潜伏期間は最長14日程度ということで、流行地滞在から発症まで15日以上経っている場合は、デング熱の可能性は非常に低くなります。(似た話はエボラ出血熱の記事でも書きましたね。)

 

4、5.デング熱は通常、高熱で発症して引き続き強い頭痛、眼痛、筋肉痛を起こします。筋肉痛は「骨まで痛むような」強いものだそうで、'break bone fever'(「骨折り熱」という感じでしょうか)との俗称があります。

熱は3日から6日続き(しばしばいったん解熱してから再度上昇する二峰性パターンを取ります)、解熱した頃に皮疹が出ます。かゆみを伴うことが特徴だそうです。

皮疹は麻しん(はしか)と似ることがあり、区別が問題になることがあります。診断上の困難を避けるために麻しん風疹混合ワクチンを受けられることをお勧めします。

 

6.デング熱の検査上の特徴は、白血球と血小板の減少、CRPが高くないことなどです。血小板減少は出血を起こしやすくし、強い炎症反応に伴って毛細血管から血漿(血液中の非細胞成分)が漏れ出しやすくなります。

これらは自然に良くなることが多いのですが、一部の患者さんは血管内脱水が強くなって、血圧低下から循環不全、臓器障害を伴って重症化します。この状態になるとデング出血熱と呼ばれます。

 

7.今のところ、我が国ではインフルエンザ迅速キットのようにすぐデング熱と診断できる検査はありませんが、問診(流行地(東南アジア、中南米など)への2週間以内の渡航歴の有無など)身体所見、そして上に挙げた一般検査の経過を追うことで診断に至ることは可能です。大事なのは、発熱後の経過を数日追いかけて重症化徴候がないか慎重に見ることです。

次は治療について。直接ウィルスに効く薬はありませんが、基本的には血管内脱水に対して十分な補液(経口または点滴)を行い循環を保つことができればほとんどは自然治癒していくわけです。

ただし、痛み・発熱に対して十分な手当が必要ですが、アスピリンは出血を助長することと、特に小児においてはライ症候群(急性脳症を起こす重篤な病気)の発生率を上げる可能性があることから使用してはいけません。市販薬を購入するときは注意してください。
小児の解熱鎮痛に良く使われるアセタミノフェンが無難なようです。

十分な補液にも関わらず重症化徴候が見られる場合は入院を考慮することになります。

 

8.2.でも触れましたが、感染を媒介する蚊に刺されない、蚊を増やさない環境を作ることが大事です。

肌の露出を少ない服を着る、虫除けのDEET入りスプレーを使う。

水たまりを自宅の周りに作らない:廃棄タイヤの中の水たまり、空き缶、花瓶、ゴミ箱、使い捨てコップ・・・

 

9.国や地域によって異なりますが、デング熱患者報告数に対するデング出血熱患者数の割合は1%未満から5%未満程度のようです。2回目の感染ではデング出血熱への移行リスクが10倍程度上がるといわれており、蔓延地域ではそれを含めてのこの数字ということになるかと思います。

WHOの統計などによると、デング出血熱の死亡率は最大15%程度ですが適切な治療を受ければ1%未満に減らせます。エボラ出血熱のウン10%という死亡率から見るとずいぶん低いですね。

エボラウィルスとちがって、感染者のほとんどがデング熱で済みます(95〜99%以上)し、不顕性感染(感染しても症状が出ず治ってしまうこと)もそこそこあるそうですから、もし体にデングウィルスが入っても重症化する確率はかなり低いと言えそうです。

人から人への感染はないウィルスですからここも安心ポイントですね。

 

以上です。例によって長文となってしまいましてすいません。

この記事は、下記サイトを参考に作成しました。ご意見、間違いのご指摘等いただけましたら幸いです。

 

藤田保健衛生大学救急総合内科ブログ

http://fhugim.com/?p=2383

感染症・リウマチ内科のメモ 聖霊三方原病院(静岡県浜松市)の勤務医ブログ

http://blog.goo.ne.jp/da350350350/e/a7da2f75b44bf16cc7ae651302fedefa

 

厚生労働省 デング熱に関するQ&A

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dengue_fever_qa.html

 

Dengue guidelines, for diagnosis, treatment, prevention and control new edition 2009

http://whqlibdoc.who.int/publications/2009/9789241547871_eng.pdf?ua=1

CDC Yellow Book Chapter3-Dengue

http://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2014/chapter-3-infectious-diseases-related-to-travel/dengue

Dengue in Japan? (国際感染症センター 忽那賢志医師が作成されたスライドプレゼンテーションです。医療者向け)

http://www.slideshare.net/kutsunasatoshi/dengue-in-japan-30691317

 

2014-09-11 12:15:27

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