インタビュー

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介護・福祉の支えがあってこその地域医療。その大事さに気づいたとき、ホームドクターになろうと決めました。

以前は病院の循環器内科で診療しておりました。心臓という臓器、体の1部分を主に診ていたわけです。医師としてのキャリアを積み人としての経験を積むにつれて、患者さんの心身の状態を、ご家族や地域など置かれた環境を含めて全体として理解し関わりたいと思うようになり、家庭医療(外来診療(プライマリ・ケア)を学ぶ医療分野。「私たちが大事にしたいこと:ACCCC」をご参照ください。)の研修を受けました。そこでは医療職のみならず介護や福祉の専門職のみなさまが地域の人々を支えていることを知り、目から鱗が落ちました。医療職以外の他職種と連携を取りながら、身近な困りごとの相談役として地域に貢献していきたいと思っています。

医師を志した理由、内科を専門にされたきっかけを教えてください。

医師を志した理由の一つに産婦人科医師である父の影響はあると思います。とはいえ、分娩や手術を行っていた頃は家族で外出中に呼び出されてとんぼ返りすることがよくあり、あこがれと同時に大変な職業だな、という印象がありました。医学部に進学した時は、特に将来の進路を決めていたわけではありませんでした。大学の卒業を間近にして進路を考えた時に、自分は不器用で切ったり縫ったりが苦手という意識があったため、外科系の仕事は無理だなあと思ってました。父が理解を示してくれたこともあり、内科を選択して今に至ります。

卒業後すぐに大学医局に所属しました。内科系の疾患を一通り見ることができる医師を養成するというポリシーを持つ医局で研鑽を積んだことは、今でも私の「広く全体を見る」姿勢の基礎になっています。

診察の際に心がけていることは何ですか?

患者さまには、診察のたびに何かいいことを持ち帰ってほしい、診察室を出るときに笑顔になってもらいたいなと思っています。そのために、できるだけ余裕を持って接するよう心がけています。患者さまのニーズに応えるためにも、気軽に症状を話していただける雰囲気づくりは不可欠ですので。

プライマリ・ケアなど、地域医療にすごく力を入れてらっしゃいますが、どうしてですか?

勤務医時代には、病気を治せば患者さまはハッピーになれると単純に思っていました。でも、実際には、患者さまは病気を治すためだけに生活しているわけではなくて、経済的な問題や家庭や地域の人付き合いでの悩みといったより大きな問題を抱えておられます。家庭医療の研修を受ける中で、医療職ではない介護や福祉関連の方の支えがあって、はじめて私たちの治療が活きてくるのだということに気づき、愕然としました。診療所で働く際には、病院で身につけた知識を活かして地域に貢献するためにプライマリ・ケアをきちんと学ばないといけないと痛感しました。専門医療とプライマリ・ケアとどちらが大事なのかということではなくて、両方とも大事だということに気づいたわけです。車の両輪ですね。

勤務医時代、患者さんの病気が治る喜びに直接関われる感動がありました。プライマリ・ケアを志してからは、それとはまた違って、スタッフや介護・福祉の専門家たちと一緒に患者さまを長く見守り付き合っていく楽しみがあります。じんわりとしたあたたかみに惹かれますね。

訪問診療を行う際に気をつけていることなどがあれば教えてください。

医師ひとりの判断で診療を行わないということです。介護や福祉関連の方、ご家族など、複数の視点からひとりの患者さまを診ていくことが重要だと思っています。医療が独りよがりになって、周りの人たちが萎縮してしまっては患者さまのためになりません。訪問診療に限りませんが、チームプレイを意識しながら診療を行っています。

患者さまへのメッセージをお願いします

病気があるから不健康なのだ、と思わないでほしいのですね。病気があっても毎日楽しく過ごせれば、その人は健康だと思いますし、他方で、体調に問題がなくても、気持ちがふさいだり落ち着かなかったりというのは健康といえないのかもしれません。WHO(世界保健機関)の定義(『健康とは肉体的,精神的(,心理的(霊的))かつ社会的にすべてが満たされた状態(その程度は種々に変動し得る)であって、単に疾患や虚弱がないということではない。』)にあるように、病気のあるなしは健康の一局面に過ぎないのですね、重要な局面ではありますけど。

プライマリ・ケア/家庭医療の役割は、病気を治療することだけではないのです。ちょっとした体の不調やお悩み、困りごとなどにも、幅広く寛容にお応えできる相談役になれるよう、努めてまいります。何か困ったことがあれば、例えば、ペットが病気で悲しいというようなことでもかまいません。ひとりで抱え込まず、当クリニックに気兼ねなく持ち込んでいただければ幸いです。