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「ジカ熱」について

「ジカ熱」について

「ジカ熱」について

お久しぶりです。
今年は昨年とうって変わってインフルエンザの流行が遅れていましたが、石川県も1月第2週に流行の目安である定点観測期間当たり患者報告数が1を超えて流行入りしました。

 

さて、インフルエンザとは直接は関係ないのですがウィルス感染症つながりで、最近話題になっている新しい感染症「ジカ熱」について勉強してみました。
 

まずまとめを示します:

1.ジカ熱は蚊を媒介した感染症です。人から人には移りません

2.アフリカ、東南アジア、オセアニア、中南米に急速に広がっています。

3.潜伏期間は2-7日間です。

4.症状はデング熱など他の節足動物媒介感染症と似ています。微熱、関節痛、頭痛、皮疹、結膜充血などでデングと比べると軽度です。

5.診断は専門施設での特殊検査が必要です。かかりつけ医に相談してください。

6.特効薬はありません。発熱や痛みに対する対症療法で自然治癒します

7.予防が大事です。流行地では、蚊に刺されない工夫を最大限行いましょう。

8.妊婦がかかると、小頭症のリスクが上がると報告されました。流行地への不急の渡航は避けることをお勧めします。
 

さて、1月18日から19日にかけて、テレビや新聞などのメディア各社がニュースを一斉に報道したので耳にした方も多いかと思います。たとえば↓

 

中日新聞ウェブ版(2016年1月20日 00時25分) ブラジルで小頭症の子急増 妊婦のジカ熱感染と関連か

 【リオデジャネイロ共同】8月にリオデジャネイロ五輪が開かれるブラジルで、頭が通常より小さく知的障害を伴うこともある「小頭症」の新生児が急増している。保健省は、妊娠した女性のジカ熱感染との関連がみられると指摘。米疾病対策センター(CDC)は18日までに、妊婦にブラジルなどへの渡航延期の検討を求める勧告を出した。

 日本外務省も今月、海外安全情報を出して注意を呼び掛けた。ブラジルでは来月、カーニバルが各地で行われるが、観光への悪影響も懸念される。

 ジカ熱は蚊が媒介するジカウイルスによって起きる感染症で、昨年5月ごろからブラジルで流行している。

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2016011901001683.html

(引用以上)
 

今年オリンピックが開催されるブラジルのニュースですので、気になりますね。簡単な知識を持っておいて良いと思いますので以下ご参考ください。

 

 「ジカ熱」は、ジカウィルスによって起こる感染症です。「節足動物媒介感染症」のひとつで蚊が媒介します。デング熱、チクングニア熱、黄熱、その他ウィルス感染症ではありませんがマラリア(原虫)も蚊から人に移る節足動物媒介感染症です。

 ジカウィルスは1947年、アフリカ東部のウガンダにあるZika森林でのマラリア調査中に偶然見つかりました。その後、ウィルスがアフリカ大陸、南~東南アジアに存在していることが確認されましたが、2005年ごろまでは実際にジカ熱を発症した患者は散発的に報告される程度でした。

 2007年にミクロネシアのヤップ島でジカ熱のアウトブレイクがみられました。2013年にボラボラ島を中心としたフランス領ポリネシア(タヒチ島のある地域ですね)でのアウトブレイクは、クック諸島やニューカレドニアに波及しました。

 2015年6月にブラジルで発症例が初めて報告され、以後ブラジルを始めとした中南米諸国で報告が相次いでいます。ここ10年で広がってきた新興感染症といえます。地理的な広がりは、下記医学雑誌の論文にある図が分かりやすいです。(Zika virus: following the path of dengue and chikungunya? the Lancet 2015; 386: 243-244.  http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(15)61273-9 )

 

 症状はデング熱に似ています(デングについては以前に書いたブログ記事をご参考ください。http://www.kontaniclinic.jp/app/Blogarticleview/index/ArticleId/61)。

・微熱、関節痛、頭痛、皮疹、結膜充血などです。比較的軽度のようです。

・潜伏期間は2-7日間です。

・デング同様人から人への感染はありません。インフルエンザやエボラ出血熱( http://www.kontaniclinic.jp/app/Blogarticleview/index/ArticleId/58 )と違うところですね。

・デングと比べて結膜充血が高頻度に見られるようです。

皮疹はデング(や麻疹:熱が下がってから出ることが多い)と異なり、発熱中に出現することが多いです。

・デングで注意すべき血漿漏出症候群・出血性合併症(デング出血熱)の報告はありません。一般に予後は良好なようです。

・ギラン・バレ症候群という神経合併症が報告されています。

2015年のブラジルでのアウトブレイクでは、流行地における新生児の小頭症患者数が非流行地とくらべて75倍と高率であった、と報告されました。これを受けての上記報道、米国CDCの渡航延期勧告となったわけです。

 

 診断は、流行地への渡航歴と症状・身体所見を元に、血液あるいは尿中の遺伝子検査で確定します。この検査は保険診療では行うことができません。ジカ熱などの蚊媒介感染症が疑われたら受診した医療機関から各地域の専門医療機関に紹介受診していただくことになります。かかりつけ医にご相談ください。

http://www.kansensho.or.jp/mosquito/general.html

 また、旅行から帰国の時であれば、空港や港の検疫所で相談を受けてもらえます。

http://www.forth.go.jp/link/index.html

 

 治療です。これまたデング同様、ジカ熱自体に効く特効薬はありません。発熱や痛みなどに対症療法を行います。症状は3日から12日でおさまるようです。デング同様、脱水を避けるため十分水分塩分を取ること、鎮痛解熱にアセトアミノフェンが推奨されることが重要です。

 予防です。ワクチンはまだありません。これまたこれまたデングと同様流行地で蚊に刺されないようにしましょう。虫よけスプレー(DEET)を使う、皮膚の露出の少ない衣服を着る、蚊帳を使う(ジカ熱やデングを媒介するヤブカは都市部に生息していますので、ホテルにもいます)ことが大事です。

 

 最後に、小頭症について補足します。

 小頭症 microcephalyは、これまでもTORCH症候群の一症状として知られていました。TORCH症候群とは、妊婦(特に妊娠初期(0~3ヶ月))がある種の感染症にかかった時に胎児に起きる先天性異常のことです。TORCHは、原因になる病原体の名前の頭文字をとったものです。最近風疹の流行に伴って注目されている先天性風しん症候群はTORCH症候群のひとつです。以下のサイトが参考になるかと思います。

先天性トキソプラズマ&サイトメガロウィルス感染症 患者会「トーチの会」 http://toxo-cmv.org/about_meisyo.html

 

 新生児の小頭症と精神運動発達遅滞との関連が知られていますので、ブラジルのジカ熱流行で精神運動発達遅滞を持つ児が増えることが懸念されます。裏を返せば、TORCH症候群同様、ジカウィルスへの感染が避けられれば、小頭症ひいては精神運動発達遅滞を持つ児を増やさずにすむ可能性が高いわけです。

 

 遠い世界の話に思えてしまいますが、ブラジルは今年オリンピックがありますので渡航される方々が増えるでしょう。さらに、ミクロネシア・ポリネシアなどのオセアニア諸島は観光や新婚旅行先に選ばれることが多いようです。妊婦さんやハネムーンベイビーを期待して旅行される予定の方々は、旅行先の変更をご検討することをお勧めします。

海外の感染症情報は、厚労省検疫所のHP、FORTHが詳しいので、ごらんいただき参考にしてください。http://www.forth.go.jp/index.html


まとめのまとめ:ジカ熱は比較的軽い病気ですが、妊婦さんがかかると赤ちゃんに障害を残すリスクが上がります。感染を避けるため流行地への渡航は慎重にご検討ください。

 

追伸:この記事は、以下のサイトなどを参考に作成しました。

・国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国際感染症センター 国際感染症対策室

http://www.dcc-ncgm.info/topic/topic-ジカ熱/

DCC zika factsheet 20160120.pdf :上記サイトからダウンロードできます。

・「What's Zika?」ジカ熱を知り、ジカ熱に備えよう! 上記センター 忽那賢志医師が作成したスライドです。

http://www.slideshare.net/kutsunasatoshi/ss-55861933

 

 

 

2016-01-22 14:17:32

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